クリーニングの徒然

scylt/ 6月 30, 2019/ よもやま/ 0 comments

今回はクリーニングの徒然を。

そもそも

小生のシャツを購入してくれる方は、高い料金を払って、高級ビスポークシャツを選ばれるわけなので、総じて洋服に関して、意識の高いお客様が多く、シャツの取り扱いに関しても気を付けて頂いるようで

お話しを聞いていると、やはり基本「家」で洗う方が殆ど。(小生も同左)

中には、洗濯機も使わず、40度手前のぬるま湯で押し洗いされている方もいらっしゃったりと。

そこまでして貰えると、メーカーからすれば、本望ですが・・

今回は逆に、一般的なクリーニング屋さんに出し、「無残な姿」と化した例を

ご紹介しようかと思います(笑)

 

現状、一般的なクリーニング屋さん(大手チェーン系など)は、シャツ1枚 150円前後。

150円で、洗って、プレスしてくれるのですから、ありがたい限りです

が・・・、

こうした150円前後の大手チェーン系のクリーニング屋さんがどういう処理をしているのかを知っている人は殆どいないと思います

ということで、非常に分かり易い動画がありましたので、ご紹介。

簡単にまとめると

①大きな洗濯機で大量に回す

②洗い直後、衿とカフスをマシンプレス

③ボディをマシンプレス (②と③が一緒になったマシンもあるのかも)

上記のスピードを重視した手順によって、150円という値段を実現させている訳です(といっても、基本的にはかなりの薄利で、顧客獲得を優先した値段設定に違いはありませんが)

このやり方を否定する訳では全くなく、これだけの作業を150円前後でやり、仕上がりもピシッとしている訳ですから、大変すばらしい仕事だと思います

ただ、高級シャツの取り扱いと言う意味では、

やはり難しいかな、と思われ、その理由をここで説明したいと思います

 

まず、①大きな釜のドラムで大量に洗う

→ ドラムの洗い方は、ぐるぐる回りながら上から下に叩きつけながら汚れを押し出すので

「生地を傷めます」

一般的な綿・ポリ混紡の生地や、綿100%でも80/2クラスであれば耐久力もありますが、

120/2 以上の高級番手になってくると、超長綿として糸自体が細いので、やはりおススメ出来ません

また、「ボタンも傷つけます」

以下の画像は、小生の友達の scylt 120/2  ポプリンを 週1度、約1年間着用。150円前後のクリーニング屋さんに出した結果です

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衿のエッジが破け、ボタンが全く違う色のボタンがついてます(泣)

s-IMG_2995こちらは、台衿のボタンがもぎ取れてしまって、穴が開いてしまっています。もちろん、衿のエッジも破けています。

一方、衿の返し部分は破けていません

これは、scyltが、フラシ芯仕様にしている為、衿腰が柔らかく、エッジがたたないので破けないのです

これが、フラシ芯ではなく、トップヒューズ芯=永久接着芯仕様になると

衿腰、衿の返りが破けてきます

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s-IMG_3112上記2枚は、小生の既製品のシャツ

上は、Brooks brothersのノンアイロンシャツ、下はN.Tyler の綿100シャツです

ちなみに

ノンアイロンシャツは、

①綿100を製品で「ホルマリン」加工(厳密にはホルムアルデヒド)しているもの=形状記憶と、

②糸(綿ポリ混紡など)や生地自体の加工=液体アンモニア加工等でシワにならないもの=形態安定

の2種類があります

① の「ホルマリン(ホルムアルデヒドの水溶液)」って、あの標本などに使われるビーカーに入った液体です

「ホルマリン」の毒性は、徐々に知られるようになってきてますが、このノンアイロンシャツに使われている事はあまり知られておりません

半永久的に、組織を腐らせないっ薬品て・・・・考えると身体に、良い訳無さそうです

シャツの着用や洗濯でどの程度人体に影響するのかは分かりませんが、あまりおススメできるものではありませんね。

縫製後の製品で加工されているので、「袖の中央にプレス線がはいり消えないタイプ」が、

この形状記憶ノンアイロンシャツになります

洗って干したら、そのまま着用できるノンアイロンシャツのありがたみは、皆さんもご存じの事かと思いますが・・・出来れば避けた方が無難ですね

②の液体アンモニアの方は、人体には特に影響無さそうですね (多分・・)

衿腰の破れの紹介から、話がそれてしまいましたが、

つまり、小生のシャツは、フラシ芯仕様なので、首に刺さるようなエッジが無く、ネック周りの着心地がよいという事でした (笑)

本題に戻って

他にも、クリーニングで傷めた箇所、カフスですね

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カフスのエッジがボロボロ、ボタンホールも然り、さらに、ケンボロの根元まで破れてしまっています(泣) ボタンも変わってましたね・・

カフスは、時計や手首に当たるので、もっとも擦れやすい場所。

糊付けで硬くなった状態の着用から、上記のクリーニングを何度も繰り替えていけば、繊細な生地のシャツは、必然破けてしまいますね・・・・

そして、150円クリーニングの問題点

② 濡れ掛けアイロン

動画を見てもらえると分かりますが、洗濯された直後、濡れた状態で、一気にマシンプレスをかけていきます

家でもシャツのアイロンがけをするとき、事前の「霧吹き」が重要になりますが、

理屈としては同じで、繊維に水分が入った状態の方が、シワが取れやすいのです

ただ、この洗った直後100%水分が入った状態での、高温プレスが「縮み」の一番の原因になります。

天然繊維は、水分、熱、圧力、この3つを同時にかけると縮む性質があります。

ウールで言えば、縮絨、フェルト化にあたります

その上、上記にあげた、トップヒューズ芯=永久接着芯の衿やカフスは、芯自体が生地以上に縮むので、このプレスを繰り返すと半年もすれば、衿など1㎝位平気で縮んでいきます

ビジネスマンが、大きめのネックサイズを選ぶ理由がここにあり、その原因はこの「濡れ掛けプレス」とトップヒューズ芯にあるのです

以前のブログでも触れてますが、

Borrelli や Frayもこのトップヒューズ芯を採用していますが、

少なくともこの日本のクリーニングの洗い方法を前提にしているわけでは無いので、

値段が高い癖に縮んだからと言って、メーカーに文句を言うのはやめましょう(笑)

最後の③ ボディのマシンプレス

ここまで行くと、かっちょいい(笑)

日本の技術にアッバレとしか言えない 凄みを感じますね

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ネットより画像参照

ここで問題となるのは、衿やカフスと同じことですが、釦の上からそのまま強い圧力をかける事です。

ボタン厚が薄く、また釦付け糸の足が短い(殆どない)既製品のシャツであれば、生地の中にめり込んでいくので、問題ないかと思いますが

高級シャツはと言えば、大概ボタンは厚く、釦付けは手付けで、根巻きの足も長めです

真上から垂直に圧がかかれば、生地にめり込み、実際は、釦が斜め向いた状態で圧がかかる事の方が多く、

家でアイロン仕上げをするときには、釦を避けながらその周りを滑らせる工程において

必然、釦付け糸、土台の生地自体に無理なテンションがかかり、またシャツを傷めていくわけです

 

 

そんなこんなで、また長くなってしまいましたが、

という事で、高級シャツをクリーニング屋に出す時は、「ハンド仕上げ」をしてくれるお店を探す事をオススメします。

値段は500円以上すると思いますが、ボディや衿・カフスの仕上げ方のリクエストも聞いてくれるし、

最終的にはシャツが長持ちするのでコスパが上がるのではないかと思います。

 

ちなみに、小生の友達のシャツは、「衿とカフスの付け替え」で小生がお修理しました(有償)

s-IMG_3151白いシャツは、1年近い着用で、少なからず黄ばんでしまっており、

新品の白生地を使うと衿とカフスだけ浮いてしまうので

一緒に預けられた、破けや汚れがキツい他のシャツを犠牲にして、衿とカフスパーツを取り、2枚を復活させることにしました

ただ、厳しい目で見ると・・

1年の着用とクリーニングを繰り返した使用済み生地は、かなり組織密度がはいって(上がって)しまい、針穴の凸が出てしまうのが散見され、残念ながら新品のようにはいきませんでした

そんな事も勉強になった。今回のお直しでした・・ 礼

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