第3章 縫製編 後編 ~ハンドワーク~

scylt/ 8月 13, 2017/ 縫製の徒然/ 0 comments

縫製編

先回の章では、運針一つ取っても、メーカーそれぞれのスペックや考え方があり、薀蓄重視のモノ作りに疑問符がある事をお伝えしました。

今回はもう一歩踏み込んだ縫製テクニック・ハンドの工程に関して、少し触れたいと思います

ハンドワークといえば、ナポリ系のシャツが挙げられます。Luigi Borrelli を筆頭に、Giovanni Inglese, Barba ,Anna Matuozzo ,Maria Santangelo ,Finamore ,kiton などなど

ナポリ系以外では、ほぼ見られない特徴的な縫製技術ですが、その内容はといえば、

1:アームホール 2:カフス 3:襟ぐり(台衿)4:ヨーク(肩)5:ボタンホール 6:ボタン付け 7:ガゼット 8:前立て 9:グリカン(剣ボロ)10:ハンドステッチ(飾りステッチ)

大体、これらが一般的に注目されるハンドワークの箇所になり、メーカーによってその取扱い数が異なり、また若干その周辺仕様も違ってきます

今回の主題の一つ、「袖ぐりのハンドワーク」に関していえば、たとえば、「kiton」アームホール

普通は袖山の縫い代を肩ヨークの上に縫い付けて処理する形をとりますが、「kiton」の袖山のまつり始末は、肩ヨークの中に入れ込み袖山の縫い代を隠します。いせ分量が多くなり、凹凸が出る袖山の肌に当たる部分を少しでも軽減する考えだと思われますが、縫製の手順として、一手間さらにかけることになります。その意味で、これもハイブランドとしてのアティチュードの表れと考ることができます。

そもそも、ハンドワークの効果とは、

①ミシンステッチよりも、軽く仕上げ、着心地をよくすることが出来る

②特に、袖ぐり、カフス、衿付けに関して、立体的に作ろうとする時に、綺麗に縫い上げる事が出来る

上記に挙げた「輪を描くパーツ」の縫製は、生地の表裏に関して、接ぎ部の控え分や縫製時の内周差外周差とで、3~4㎜の差が出てきます。この差をミシンで埋めようとすると、縫い代の重なりの摩擦なども関係し、「ねじれ」が生まれやすくなり、綺麗に縫い上げる事が難しくなります。そこで、ハンドワークによる「まつり縫い」により、この差をいせ加減で調整しながら綺麗に消す訳です。

③また、衿やカフスに関しては、パーツ交換がある場合、生地のダメージを最小限に留めてくれるという点も挙げられます

①着心地(軽さ、立体感)、②縫製の美しさ、それと③交換などの機能性という3点において、ハンドワークは手間のかかる一方で、メリットも大きいわけです。9

しかし実は、このハンドワークに長けたナポリシャツの、更なる上をいく高級シャツが存在する事はあまり知られていません。(FRAYはなく)

それは、ミシンを全く使わずに、全ての部位をオールフルハンドで縫い上げられたシャツです。

スーツ、ジャケットでも限られたごく一部の職人さん(テーラー)によるサービスですが、シャツに関してもごく一部いらっしゃるようです。

彼ら職人さんは、あらゆる部位、地縫いも全てハンドワークで行います。

例えば、「袖ぐり」

一番動きが求められる箇所ですが、アームホールの地縫いをミシンでタイトに均一に縫い上げるのと、ハンドで加減しながら縫い上げるのでは、やはり違いが生まれます。フルハンドでは、部分強弱をつけられるので、可動がより柔らかく融通のある・身体の動きについてくるアームホールを自在に作ることができるわけです

その意味で

時々、ナポリ系ハンドワークシャツの表記で「袖付け」という言葉が見受けられますが、本来であればこれは間違いと言えます。既製シャツは、あくまでも「縫い代処理」だけがハンドワークでああるにもかかわらず、「袖付け」という言葉は、「地縫い」を想像させてしまうからです。

もちろん、こういったシャツは既製シャツではありえないので、「オーダー」の世界にしか存在しません。値段でいえば、シャツ1枚 概ね7~8万円以上という感じでしょうか。スーツであれば、60万円以上でしょうか。(kitonのスーツも同じ位の値段しますから、それに比べれば安い・・気もします。)

彼らこそは正真正銘の「フルハンドメイド」なので、ナポリ系既製シャツのハンドワーク箇所がいくら多い部類のものでも、あくまで「セミハンドメイド」と言うカテゴリーに属する訳です

一時期雑誌にも出ていた「柳下望都さん」は、若い女性ながらフルハンドメイドシャツの職人さんとして、(タキザワシゲルさんの下で働かれていた)知る人は知っているでしょうか(現在は不明)

小生もいつか、チャレンジしてその違いを肌で感じてみたいような・・・

いや別に、そういうシャツを求めている訳ではないような・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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