新作ノンアイロン系生地 考察

scylt/ 6月 30, 2020/ 縫製の徒然/ 0 comments

今回は、最近インスタ投稿とリンクしてブログアップ

デニム×刺し子 後編は また後で。

という事で、新作生地バンチの中から、気になった「ノンアイロン」タイプの生地でシャツを作り

どんなもんか、体験リポート&紹介したいと思います

以前も一度「ノンアイロンシャツ」に関してブログしたことがあり、

その時は日本でノンアイロン系シャツと言えば、

「形状記憶」と「形態安定」という言葉の規定があり、それぞれ「糸」から、もしくは「製品」の薬品加工(ホルマリンや液体アンモニア)によって、防シワ加工がされていたことを紹介、

また、シャツ生地メーカーの雄:Thomas mason の生地の中に、「journey」と言う防シワ加工された生地シリーズがある事も紹介したかと思います

今回は、新しく「Canclini」社(カンクリーニ)が出している防シワタイプのシリーズ「voyager」

バンチを提供してくれた生地屋さん曰く、「journey」よりも良いとのこと。

では、早速・・・

今回手に入れた、新生地バンチ(嬉) と、ピックしたカンクリーニ

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ちょっとヴィンテージぽい濃淡のあるブルーのドビー柄。以前買った、Dries van noten のピンクのシャツ地を思い出し、もしかして色違い?と即決め

が、、後から見ると、似てるけど違った

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さておき

今回のデザインは、最近ずっとやってるような気のする「サファリデザイン」。

テストサンプルとしては、色々と試さないと意味が無いので、なるべく縫いの多いタイプにする。

ただし、トレンドのオーバーサイズが製品作成でも続いたので、改めて、基本に戻りシルエットをタイトで作成。ついでに、自分のボディパターンを見直す、よいタイミングに。

細かいポイントとしては、ポケットを、「吊り上げ型」に。

パターン上で、ポケットをストレートに作り、そのまま水平に置くと、着用時には肩下がりの分ポケット端が斜めに下がる(間違いという訳ではない)

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これを着用時に、フラットに持っていこうとすると、パターンを斜めに吊り上げなければいけない

アーミー系のアウターなどは、四角いポケットをそのまま斜めに角度をつける。

最近はギア系、アーバン系デザインが流行っているが、そちらもそういうデザインが多い

ただ今回は、ジャストサイズの「カミチェリア」的なシャツ、

あくまで、クラシカル、テイラー系のテイストでいくので、テーラードスーツのバルカポケットのイメージ。

ということで、ポケット自身を歪める

目的は、ポケット自体にも「地の目」を通す事。今回の様なタックがある場合は特に大切。

こんな感じ

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次に、縫製をちょろっと。

ノンアイロン系の生地の縫製は、なかなか難しい

表面に樹脂加工して、防シワにしている為、生地自体のハリ感が強く縫いが跳ね返ってくる

本体を縫う前に、試し縫いでミシンの糸調整。直線縫いで、このピリつき・・・汗

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縫製面は、毎度の縫製なので割愛。

今回のポイントの「星留め」だけちょろっとフォーカス

まずは、肩と衿周り。

衿ぐりを閉じる前に星留めを入れると、始点、終点の玉留めがキレイに隠せるので、途中工程で入れてますが、

出来れば最後のまとめ作業で、ハンドワークはまとめたいところ・・・考えどころです

20200612_084603 いやしかし、ドビー柄に埋もれとる・・・・

これも経験。ドビー生地に星留めは、あまりおススメしない方が良いかも(笑)

他にも カフス周り。

「星留め」は、糸の太さ、返し縫いによる表面の出す点の大きさで、表情が変わる。

今回 糸は細め:シルク糸30番9号 ミシン糸太番手

(穴糸の16号とかだと太過ぎるのでね・・・)

ドビー柄に埋もれるという事態に面し、少し大きめ(0.5㎜→1㎜)に出す方向に修正

ふんわりと返し縫いして、後に、アイロンで潰して、より大きく広げる

裏面の糸の出方も、ある程度均一にしたい所。

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アイロンで潰すとこんな感じ

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それと、 エルボーパッチにも。

袖縫って筒になった状態でも、中敷き引けば問題無く、ハンドワークできます

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右と左で、 ハンドステッチと ミシンステッチの比較も考察

別布のレザー、スェードの切りっぱとかであれば、ミシンでもよいかな

ただこの生地は、エッジが跳ねかえって丸くなる感じが、この肘当てのミシンステッチに向いてないかなぁ

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それと、胸のフラップポケット。

受けの方は、ダブルのミシンステッチ

アームホールは、定番の、ミシンステッチ×ハンド千鳥始末

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という事で、

縫い上りはこんな感じ。

しわしわに見えますが・・・

通常の綿100%の縫い上りとは違い、生地自体のシワが少ないです

(綿100%の洗濯後のシャツをイメージしてもらえれば、なんとなく想像できるかな)

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ボディに着せて、中身が入ると、生地が引っ張られて、よりシワも見えなくなります

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ただし、一番最初に見せたような、縫いの跳ね返りが強いので、

前立てやポケット、本縫い&ステッチ部において「ピリつき」が いつもより出てしまっています

結構気を遣って縫っていますが、布が重なる所はなかなか抑えきれないですね

これは小生自身の技術的な問題もありますが、以前工場の人に聞いたときも、Thomas mason 「journey」の縫製のピリつきはある程度仕方ないと、

プレスでばちっと抑えると言ってましたので、やはり傾向として、仕方ない所かと思われます

ただし、ここからが「ノンアイロン」系の本領発揮をして貰う所。

この縫い上りの製品、少ないとはいえ、生地のシワがそこかしこに見られる状態

ここで、水で満遍なく霧吹きします

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そして、約10分後。 乾くのも早いこの生地。

ドビー柄の凹凸と、糸自体の強撚感のお陰かな。

お。なんか綺麗になってる

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後身は縫製部も少ないので、よりキレイ

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生地部分は、殆どシワがとれて、すっきりしてますね

前身は、縫製部分が多いので、ピリつきが目立ちますが、背中や袖はかなり綺麗。

「ノンアイロン系」の肩書きは、伊達じゃないですね

今回、フロントに、「表前立て」、「フロントポケット」とデザインを入れましたが

通常、小生のシャツのデフォルトは、「裏前立て」で「ノーポケット」

この定番のドレスシャツタイプにしていれば、 霧吹きだけで、もしくは洗濯後そのままで、と期待を持たせてくれる出来かなと、感じさせます。

とは言え、縫いの集中するディテールはやはりピリついているので、

結局はアイロン仕上げは必要そうです

という事で、 やはり アイロン仕上げ

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ただし、通常よりも大分楽なアイロン。生地自体にシワが殆ど無いので、

軽く伸ばしてあげつつ、縫製部にポイントを押さえて圧力をかけて上げれば。

通常10分位かかるアイロン仕上げが、3分で終わるような印象。

ちなみに、着用時の経過ではこんな感じ

朝一、軽いプレス仕上げして着用直後がこちら

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そしてこちらが一日経過後

こんな日に限って、荷物の出荷作業がちょこちょこあり、いつもよりシワになりやすい状況

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縫製部は、やはり肉体労働の汗(水分と温度)で少しピリつきがでてますね

一方で、生地自体は少しくたびれていますが、シワ線のようなものは出てないですね

という事で、もとい。

ノーデザインのシンプルなシャツであれば、一日ある程度綺麗に保たれる

ビジネスマンにとって、かなり嬉しい生地なのではないかと推測されます

canclini voyager おススメです の徒然でした

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